IT業界の転職、ウソ・ホント 転職すれば給与は必ず上がりますか?

Q.

転職すれば給与は必ず上がりますか?

「キャリアアップのため転職を考えているのですが、内定が出た4社すべてで給与ダウンの提示を受け悩んでいます。転職を行う以上、給与アップは当然だと思うのですが、今回は見送るべきでしょうか?」

(27歳 プログラマー)

A.

私がお答えします。

藤田 孝弘(ふじた・たかひろ)
Spring転職エージェント シニアコンサルタント
大学卒業後、人事系コンサルティング会社に就職。人材採用と教育・人事制度関連のコンサルティングに約10年間従事。その後、IT専門の人材サーチ会社にてITコンサルタントやSEを中心とした人材のコンサルタントを約5年経験。その後アデコに転職し現在に至る。これまでIT業界を中心に4,000名以上の方の転職支援を行っている。

必ずしも「転職=給与アップ」ではありません

転職によって必ず給与が上がるわけではありません。

転職するにあたり何を目的とするのか。それがスキルアップであれば、たとえ給与ダウンしても自分の目的に合った会社を選ぶべきといえるでしょう。

給与のアップが転職の成否ではない

転職情報サイトなどで紹介される事例を見ると、確かに給与アップに成功しているケースが多く取り上げられています。

年功序列型の給与体系を持つ大企業の求人が多かった、かつてのITバブル期では「転職=給与アップ」をイメージする人も多かったようですが、いまや企業側もその人に何ができるのか、シビアに判断して給与を決める時代。将来的なキャリア形成や自分のやりたいことを優先して転職活動を行えば、希望額より低くなることも十分に考えられます。

したがって、質問者の方が誤解しているように転職すれば必ず給与が上がるとは限りませんし、逆に給与が下がったからといって、その転職が失敗だとも限りません。

給与の額は、転職にあたり「やりたいこと」と「できること」のどちらを重視するかによって決定されるといっても良いでしょう。そのことを具体的に示したのが図(1)です。ここでは弊社における転職事例を参考に、もう少し詳しく見ていくことにします。

図(1)給与アップ・ダウン/やりたいこと・できること軸の志向マトリクス

まずは図(1)におけるAグループ(「やりたいこと重視」+「給与ダウン」)の例をご紹介しましょう。

たとえ給与がダウンしても将来のキャリアパスを考え、やりたいことにチャレンジ

年収600万→400万

5年前に、商社の営業マンからベンチャー系のWeb制作会社に転職した木内幸則さん(仮名)。
現在の会社では、システム開発マネージャとして10人の部下を率い、プロジェクト全体を統括する立場にあります。

ところが、エンジニアとしての基礎的な教育を受けた経験がないことから、会社の規模が大きくなるにつれて自身のスキルや開発経験と、業務における要求レベルにギャップを感じるようになります。

そこで将来のキャリアパスを検討し、開発の基礎を勉強し直すためエンジニアとしての転職を決断。約2カ月の転職期間を経て、技術力の高さで定評のある大手SIerから、エンジニア職のオファーを得ることができました。

システム開発マネージャ木内幸則さん 30歳

結果はこれまでの年収600万円から、200万円の大幅ダウンとなる年収400万円に。とはいえ、自分の「やりたいこと」を実現し、キャリアパスにおける可能性を大きく広げるという意味では成功だったといえます。

木内さんのようにスキルアップを目的として転職を行う人は、企業側から見れば本来求めているスキルレベルを満たしていないということ。厳しいようですが、給与面では現状維持ですら難しいでしょう。

転職して給与が上がる2つのケース

では逆に、転職により給与がアップするパターンでは、どのようなケースが考えられるのでしょうか?
図(1)におけるBグループ(「できること重視」+「給与アップ」)の例を見てみましょう。

給与UPを目標に「できること」を優先に転職先を探す

島田克哉さん 26歳
プログラマー

年収350万→500万

中堅ソフトハウスでプログラマーとして勤務する島田克哉さん(仮名)は、プロジェクトリーダーとして基幹業務システムのユーザーインターフェイス開発を担当してきました。業務の内容に不満はありませんでしたが、昇給がほとんどないためリーダー職なのに新卒の社員とほとんど給料が変わらず、かつサービス残業も多かったことから転職を決意します。

島田さんが選んだのは、これまで業務で使用してきた開発ツールのツールベンダにおけるサポート職でした。4年にわたり同社の開発ツールを使用してきた経験を買われ、年収350万円から500万円という大幅アップのオファーを受けた島田さん。

従来とは大きく異なるキャリアパスを選択することとなりましたが、当初の目的である給与アップには成功しており、ご本人も満足の結果となりました。

島田さんの事例では、自分の「できること」をきちんと分析し、スキルや経験を高く評価してくれる企業に応募したことがポイントだったといえるでしょう。とはいえキャリアチェンジに伴い、今後のキャリアをどう構築していくかが大きな課題といえます。

もちろんグループAでもグループBでもない、「やりたいこと重視」かつ「給与アップ」(図(1)におけるCグループ)となることが理想ですが、このような転職を実現するには、多くの企業から必要されるような専門性の高いスキルと、広範な業務知識を備えていることが前提となります。

たとえば、金融系ERPパッケージの構築に特化してスキルを磨いてきた場合など、その人の「できること」と「やりたいこと」は、おのずから一致してくるはず。またこのような人材に対しては、企業も高い評価を下します。いわば、転職によるキャリアアップを果たした、その先に到達できる状態と考えるべきです。

将来のキャリア形成を見据えた転職を

では最後に「できること」と「やりたいこと」とのバランスがとれている例(図(1)におけるDグループ)について見てみましょう。これには同じ職種のまま転職を行うケースが該当し、給与が変わらないケースも多いようです。

「できること」、「やりたいこと」を両立した転職

古池信司さん 28歳
プログラマー

年収450万→450万

従業員20人の小規模なソフトハウスで、プログラマーとして勤務する古池信司さん(28歳)。

プロジェクトマネージャとして上流工程に携わることを希望しているのですが、派遣業務が主体の現在の会社では、プロジェクトマネージャとしてのキャリアパスを期待できません。

そこで長期的なキャリア形成が可能な企業を対象に、転職活動を実施。その結果、中堅のSIerから内定を得ることができました。職務の内容は従来と変わらず、給与も同額でのオファーとなりましたが、より大規模なプロジェクトに上流で携わることができるようになり、プロジェクトマネージャへの可能性も開けることとなりました。

転職によりすぐに職務環境や待遇が変わるわけでなくとも、数年後のキャリアに明確な差が出てくるのが、このグループの特徴といえるでしょう。

このように短い期間に限っていえば、「やりたいこと」つまり将来的を見据えたキャリア形成と、転職による給与アップは相反する関係にあります。転職を検討されている方は、まずどちらを主な目的とするのか、改めて考えてみてください。

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