「テレワーク」促進のバイブル! 改定版ガイドラインのポイント

企業のテレワーク導入と促進を積極的に進めようと、厚生労働省は2021年3月、「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」(改定版ガイドライン)を公表しました。「アフター・コロナ」「ウィズ・コロナ」の新たな日常、新しい生活様式に対応するため、2018年に策定したガイドラインを全面的に改定・刷新したものです。

「多様な働き方」のニーズも高まるなかで、テレワークの促進は企業にとって重要な取り組みの一つになりました。企業の適切な労務管理による良質なテレワーク推進の要点を盛り込んだ「改訂版ガイドライン」のポイントをお伝えします。

「テレワーク」と「推進」を掲げる

厚生労働省が2018年2月に発表したガイドラインのタイトルは、「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」でした。

刷新版では、社会課題となった「テレワーク推進」を明確かつ強力に示すため、タイトルに「テレワーク」と「推進」のフレーズを掲げ、企業に導入と浸透を呼び掛けているのが特徴です。

大改訂、4項目から11項目に拡大

従来のガイドラインは、長時間労働対策や安全衛生対応など「労働基準法」に関する注意事項を中心に、全4項目で構成されていました。

今回は構成と内容を抜本的に見直し、労務管理上の留意点やルールの策定方法など現場の運用を第一に考えた全11項目の大幅な“増強版”に変わりました。

<改定版ガイドラインの全11項目>
1.  趣旨
2.  テレワークの形態
3.  テレワークの導入に際しての留意点
4.  労務管理上の留意点
5.  テレワークのルールの策定と周知
6.  さまざまな労働時間制度の活用
7.  テレワークにおける労働時間管理の工夫
8.  テレワークにおける安全衛生の確保
9.  テレワークにおける労働災害の補償
10. テレワークの際のハラスメントへの対応
11. テレワークの際のセキュリティへの対応

テレワークとは? 項目別 のポイント

全11項目のポイントをわかりやすく整理します。

1趣旨
企業が適切に労務管理を行い、社員が安心して働くことができる良質なテレワークを推進するため、望ましい取り組みを明示。

2テレワークの形態
「テレワーク」とは何か。これまで、曖昧な点もあった「テレワークの形態」を整理して、下記の3つに定義。
  • 社員の自宅で行う「在宅勤務」
  • 自社オフィス以外に設けられた「サテライトオフィス勤務」
  • 臨機応変に選択した場所で働く「モバイル勤務」

それぞれの利点と特徴は、

在宅勤務
通勤の必要がないため、時間を柔軟に活用。仕事と家庭生活の両立に資する。
サテライトオフィス勤務
自宅の近くや通勤途中の場所等に設けられたオフィス勤務は、通勤時間を短縮しつつ、作業環境の整った場所で就労可能。
モバイル勤務
社員が自由に働く場所を選択し、外勤における移動時間を利用できる。働く場所を柔軟にすることで業務を効率化。

 

  • 最近、よく耳にする「ワーケーション」は、情報通信技術を利用して仕事を行う場合、モバイル勤務またはサテライトオフィス勤務の「一形態」と定義。

3テレワークの導入に際しての留意点
推進に当たって
導入目的、対象業務、申請等の手続き、費用負担等について、あらかじめ労使で十分に話し合い、ルールを定めておくことが重要。
対象業務
テレワークに向かないと安易に結論づけるのではなく、管理者側の意識を変えることや、業務遂行の見直しの検討が望ましい。
テレワークの対象者
社員本人の納得の上で対応。対象者を選定するに当たっては、雇用形態の違いのみを理由としてテレワーク対象者から除外しないよう留意。
望ましい取り組み
不必要な押印や署名の廃止、書類のペーパーレス化などの「既存業務の見直し・点検」、状況に応じた「円滑なコミュニケーション」、企業トップや経営層が指揮をとる「会社全体での実施」が求められる。

4労務管理上の留意点
人事評価制度
  • 上司は、部下に求める内容や水準等をあらかじめ具体的に示す。
  • 評価者に対する訓練等の機会を設ける。
  • 休日又は時間外等のメール等に対応しなかったことを理由に、不利益な人事評価を行うことは適切な人事評価とはいえない。

費用負担の取り扱い
  • 社員に過度の負担が生じることは望ましくない。
  • 労使のどちらがどのように負担するか、企業が負担する場合における限度額、社員が企業に費用を請求する場合の請求方法等については、あらかじめ労使で十分に話し合い、企業ごとの状況に応じたルールを定めておく。

テレワーク状況下における人材育成
  • 企業は、社員が自律的に業務を遂行できるよう仕事の進め方の工夫や、社内教育等によって人材の育成に取り組むことが望ましい。

テレワークを効果的に実施するための人材育成
  • 管理者による適切なマネジメントが行われることが重要。

5テレワークのルールの策定と周知
  • テレワークの場合でも、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法等の労働基準関係法令が適用される。
  • テレワークのルールを就業規則に定めて適切に周知。 例えば、テレワークを行う場所を社員の都合に合わせて柔軟に選択することができる場合には、「管理監督者が許可する場所」において可能である旨を定めておく。

6さまざまな労働時間制度の活用
労働基準法に定められたさまざまな労働時間制度
  • 全ての労働時間制度でテレワークが実施可能。テレワークを実施しやすくするために労働時間制度を変更する場合には、それぞれの制度の導入要件に合わせて変更も可能。

労基法で認められている制度
  • 通常の労働時間制度及び変形労働時間制
  • フレックスタイム制
  • 事業場外みなし労働時間制
  • 事業場外みなし労働時間制は、労働者が事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定することが困難なときに適用される制度です。

7テレワークにおける労働時間管理の工夫
テレワークにおける労働時間管理の考え方
  • 管理監督者による現認ができないなど、労働時間の把握に工夫が必要。一方で、情報通信技術を活用して行うことで労務管理を円滑に行うことも可能。
  • 企業がテレワークの場合における労働時間の管理方法をあらかじめ明確にしておく。

テレワークにおける労働時間の把握
【客観的な記録による把握】
  • 企業が労働時間を把握する原則的な方法として、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として、始業及び終業の時刻を確認。
【社員の自己申告による把握】
  • 社員に対して労働時間の実態を記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分に説明。
  • 労働時間を管理する者に対して、自己申告制の適正な運用等について十分に説明。
  • 社員の自己申告により労働時間を簡便に把握する方法として、例えば1日の終業時に、始業時刻及び終業時刻をメール等にて報告させる方法もある。

労働時間制度ごとの留意点
  • フレックスタイム制、事業場外みなし労働時間制、裁量労働制など、それぞれの制度ごとに必要に応じて労使で確認し、適時、結果に対して企業が見直しに努める。

テレワークに特有の事象の取り扱い
  • 中抜け時間
企業が把握する形でも、把握せずに始業及び終業の時刻のみを把握する手法でも認められる。
  • 勤務時間の一部についてテレワークを行う際の移動時間
この場合、就業場所間の移動時間について、社員による自由利用が保障されている時間については、休憩時間として取り扱うことが考えられる。
  • 休憩時間の取扱い
テレワークを行う社員について、労使協定により「一斉付与の原則」を適用除外とすることが可能。
  • 時間外・休日労働の労働時間管理
企業は時間外・休日労働をさせる場合には、三六協定の締結、届け出や割増賃金の支払が必要。深夜に労働させる場合には、深夜労働に係る割増賃金の支払が必要。
  • 長時間労働対策
業務の効率化に伴い、時間外労働の削減につながるというメリットが期待される。一方で、企業の管理の程度が弱くなる恐れがあることに留意。

防止策として挙げられる5点
  • メール送付の抑制等
  • システムへのアクセス制限
  • 時間外・休日・所定外深夜労働についての手続き
  • 長時間労働等を行う社員への注意喚起
  • その他(勤務間インターバル制度はテレワークにおいても長時間労働を抑制するための手段の一つとして考えられる)

8テレワークにおける安全衛生の確保
安全衛生関係法令の適用
自宅等においてテレワークを実施する場合でも、企業は関係法令等に基づき、社員の安全と健康の確保のための措置を講ずる。
自宅等でテレワークを行う際のメンタルヘルス対策の留意点
「テレワークを行う社員の安全衛生を確保するためのチェックリスト(事業者用)」を活用するなど、健康相談体制の整備や、コミュニケーションの活性化のための措置を実施することが望ましい。
自宅等でテレワークを行う際の作業環境整備の留意点
「自宅等においてテレワークを行う際の作業環境を確認するためのチェックリスト(労働者用)」を活用するなど、自宅等の作業環境に関する状況の報告を求める。
企業が実施すべき管理に関する事項
企業は、社員がテレワークを初めて実施する際に、上記が適切に実施されることを労使で確認した上で、作業を行わせることが重要。

9テレワークにおける労働災害の補償
  • 労働契約に基づいて企業の支配下にあることによって生じたテレワークにおける災害は、業務上の災害として労災保険給付の対象。
  • 企業は、情報通信機器の使用状況などの客観的な記録や社員から申告された時間の記録を適切に保存する。
  • 社員が負傷した場合の災害発生状況等について、企業や医療機関等が正確に把握できるよう、その状況を可能な限り記録しておくことを社員に周知することが望ましい。

10テレワークの際のハラスメントへの対応
  • 企業は、職場におけるパワーハラスメント、セクシュアルハラスメント等、各種ハラスメント防止のための雇用管理上の措置を講じることが義務づけられており、テレワークの際にも「ハラスメントの防止対策」を十分に講じる。

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11テレワークの際のセキュリティへの対応
  • 情報セキュリティの観点から全ての業務を一律にテレワークの対象外と判断するのではなく、関連技術の進展状況等を踏まえ、解決方法の検討を行うことや業務毎に個別に判断することが望ましい。
  • 総務省が作成している「テレワークセキュリティガイドライン」等を活用した対策の実施や社員への教育等を行うことが望ましい。

環境整備に向けた行政支援

テレワークの推進は、日本企業の発展やイノベーションに重要な鍵を握っています。このため、政府はあらゆる政策を打ち出して企業を応援、サポートしています。

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